第6回 慶子様
ずっとずっと前の話…
祖母と母に連れられ呉服屋さんに行きました。ガラスケースには綺麗な着物や小物が飾られ、店の中に入ると反物が所狭と置かれ驚きの声を上げました。次々と祝着が広げられた中の1枚を仕立てて貰う事になり仕上がった着物は畳紙に入り白地に手毬柄という可愛らしいものでした。11月の佳日鏡に映る、7歳の着物姿が記憶に残る、私と着物との出会いです。その後、折りに触れ、祖母や母から着物の楽しさを聞かされ、だんだんと和服が好きになりました。
繭から繰り出される1本の糸は、緻密な手仕事で着物や帯に仕上がっていきます。その手仕事が今日まで日本の伝統文化として尊く伝承されています。お蚕を作る人、着物や帯を作る人、仕立てる人そして着る人1つの作品を通して大勢の人が繋がっているのです。
自分で着る時には「どのような人が作ってくれたのだろう」なんてすてきに出来ているのだろう・・・と色々な思いが廻ります。
私は何年か前に1反の紬を織り上げました。糸の色は緑色、水色、黄色の3色にし地色は緑色で、水色と黄色の細い縦縞を入れました。緑色…藍染めの糸に「山桃」を染め重ねる。水色…「臭木」で染める。 黄色…「山桃」で染める。すべて植物で染め、綜絖を木綿糸にし、昔ながらの高機という織機で織り上げました。仕上がったその紬は緑色の好きな主人の母に着て貰っています。
今は箪笥に眠っている生地を「ちりめん細工」にしています。今年の干支は「未」で二男が年男なので2頭出来ました。雄、雌のように… と思い身体の色を地味目と華やか目に、その生地は祖母か曽祖母のちりめんの着物を使いました。生地は小さくなっても大事にしたいと思い残り布は箱に入れてとっておきます。何年か前に小さな「モミジバフウ」の実の間に残り布を詰めてみました。かわいらしく仕上がり今もお気に入りでずっと飾ってあります。母から譲られた着物は傷んだところもたくさんあり、良い所だけを
切り取って使っているので、もっと早くから「きものおたすけくらぶ」を知っていたら…と思います。
古いものもお手入れをきちんとすれば長く保存出来る事が良く分かります。今はもっぱらお手入れのプロ「きものおたすけくらぶ」にお任せなのですが、とても親切で丁寧に仕上げて戴いています。最近、郵送用として花びら模様の袋を戴きました。早速着物を入れて仕立てのお願いをしました。「着物を中に入れて送るだけ」苦にならずに頼めるので、また一段と身近に感じられます。これからもずっと私をサポートして下さい。
古いものも大切に・・・日本の伝統文化が更に永く継承されるようにと願っています。どうぞ宜しくお願いいたします。
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