第3回 雅杜様
「自分で着物が縫えない者に、着物を着る資格なし」そんな母の毒舌もなんのその、若いときから着物大好き人間のくせに、その手入れは母に任せっぱなしで、今日までやってきました。それでも一念発起して、和裁を習いに通った事もあります。一年間習って、残ったのは数枚の単ものと、きつい肩こりでした。自分の為に弁護しますが、洋裁は好きなんですよ。色々作りました。娘のフィギュアスケートの試合用のコスチュームとか、自分の結婚式の衣装とか。。。ね、けっこうやるでしょう?
でも、母も目が弱くなって来ているし、私には和裁の能力がないし、どこか気軽に、自分の母に頼むように、着物の手入れをお願いできるところは無いかしら。。。そんなことを思っていた頃、ネットで知り合ったお茶の友人にこちらをご紹介いただいたのです。
初めて工場にお伺いしたときに、そこで目に入った沢山の帳簿の背表紙。そこには、老舗の有名呉服店、チェーンの有名店などの名前がずらり。「こんなすごい所から沢山の注文が来ている工場なら安心」とそれからは、今まで直したかった『太ってしまい身幅の狭くなった着物の幅』『伯母から譲られた着丈の短い着物の継ぎ足し』『娘の長い袖の丈詰』『派手になった着物の染め替え』など、面倒な物を次々とお願いしてきました。もう古ぼけてしまってどうなる事やらと、捨ててしまおうかと思っていた親類から回ってきた着物など、洗い張りをして縫い直していただいたら、見違えるばかりの素晴らしい、ちょっとこのごろでは手に入らないような、ステキな着物によみがえりました。
いまどき着物を着る人も少なくなり、手直ししてまでは着ないという風潮になっています。そこで、周りを見回して、いつも着物を着ている私や娘の所に「捨ててしまうのは何だから」と着物が集ってくるんです。そんな着物も、今一度出番を待っているような気がします。洋服にしたり、袋物にするという方法もありますが、着物は小さく切ってしまってはそれまでのような気がして、なんとかもう一度着物としてよみがえらしてあげたい。そんな思いも、こちらでお願いするようになって、気楽に実現出来るようになりました。
私の母は365日着物の人ですし、私の娘も息子も着物大好き。もちろん私も。なにか事あるごとに着物を着ているといった、今時ちょっと風変わりな一家のようですが、日本人に一番似合う伝統文化遺産の着物を(!)どんどん着て行きたいと思っています。それには、「お母さん感覚で着物の手入れをお願いできる所」が必要です。そんな所を見つけることができ、私一家の着物ライフはますます楽しくなっていきそうです。
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