お手入れのいろは
第11回 「たんすコンシェルジュ」に相談しよう!

 「あのころ」っていう言葉の響きは、なんとも懐かしくて、甘酸っぱくて、ちょっぴりセンチメンタルで、でも、とても大切な何かを思い出させてくれるような...

 「明日は、デート」とドキドキしながら鏡の前でとっかえひっかえして、眠れない夜を過ごしたあの頃。食事をすれば、恥ずかしくて大きな口を開けることができずに、おちょぼ口で食べていたあの頃。家に帰れば、もう会いたくなって、いま会っていたのに、また手紙を書いてみたりしたあの頃。初めて、お祖母様に買っていただいたきものを着ると「カワイイ」とどこへ行っても褒められて、有頂天になって飛んで歩いたあの頃。

 「あの頃」ってなんだか、やけに素晴らしいと思いませんか?

 家に昔から訪ねてくる呉服屋さんが、たくさんの反物を担いできてくれると、お祖母様、お母様、その妹の叔母様と、何しろたくさんの人が集まってワイワイとあれを広げたり、コチラを合わせたり...。お嫁に行くことが決まって、さらに、喪服や訪問着など、たくさん作った日の高揚感。ふと、気がつくと、嫁いだ「あの頃」のきものが少し派手になって、縮んでしまったような?(私が、大きくなったのかしら?)

 さて、最近、「私のところに来て頂戴っ!」という出張のご依頼を引きも切らず頂戴し、おかげさまで忙しく飛び回っております。何年も前から宅配便で送ってもらえば、たいていのきもの加工のアドバイスができる仕組みをつくり、皆様にご活用いただいておりますが、出張依頼の皆様は「送るのが手間...」、「全部送るとなったら引っ越しみたいになっちゃうし...」というわけで、家に来てもらって、まるごと全部いろいろ相談したいというケースが、だんだん増えてきているわけなんです。

 特に多いのは「いただいたきものがたくさんあってどうしたらいいか」という類の相談です。

 身幅直し、裄直しなどが圧倒的に多いのですが、ちょっと派手になってしまった小紋などは、羽織にするとか、帯にするなど、意外な「変身」もできるのです。サイズ直しのポイントは、

身幅を広げる場合は、脇の縫い代に縫い込みがあるかどうか。
身丈を出す場合は、打ち上げに縫い込みがあるかどうか。
裄を出す場合には、袖付けに縫い込みがあるかどうか。

などありますが、例えば、身丈が足りない場合などは、はぎ布を足したり、見せかけの襟にして、ああしてみたり、こうしてみたり...、専門知識がないと、かなり難しいのですが、こうした提案をさせていただくことで、大切な「あの頃」の思い出のきものがよみがえって、着用することができるというのは、この仕事をしている大きな喜びの一つです。「花saku」がご縁で吉田雪乃先生の十三参りのきものも、被布衿コートにリメイク。衿の着脱で道行にもなるという提案をさせていただきましたが、「あの頃の気持ちに戻れて嬉しい」というお声をいただきました。

 夏の喪服の帯に涼しげに泳ぐ鮎の刺繍をしておしゃれ帯にしたり、お義母様の喪服を小紋とあわせてリバーシブルコートにしたり、きものって素晴らしいですね。いろいろな形に姿を変えながら、「あの頃」の思い出を大切につないでいける。「たんすコンシェルジュ」がいるお店なら安心。あなたも相談してみてください。

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