第39回 あずさ様

 七五三・成人式・卒業式。運がよければ結婚式。現代の日本において、きちんと和服らしい和服を着る機会は、ざっと数えておそらくこの4回のみ。しかし、うまれも育ちも海外の(さらに付け加えるとまだ独身)わたしは、着物を着るどころか、本物を目にする機会すら一度もないまま、去年までTシャツ・ジーンズ姿ですごしてきたのである。そんなある日、テレビでたまたまどこかの着付け学校のコマーシャルを見たのだが、それに出ていた渡部謙のセリフが印象的だった。

「着物を着た女性って素敵ですよね。せっかく日本人にうまれたのに、もったいないと思いませんか?」

 ・・・思う!思いますとも!!そのセリフにまさに、目からウロコ。

 実際、アメリカでの大学時代、よく友人らから「着物を着たことがあるか?」と聞かれ、今では、日本では日常的に着物を着る人はいないと答えたら、「もったいない!あんなにキレイなのに!どうして!?」と言われたものだ。着ないどころか、今では着方すら知らない人がほとんどだと言ったら、皆は仰天していた。日本人が思っている以上に、アメリカ人は長い歴史と奥深い文化を持った日本に対して、あこがれを抱いているのである。

 着物を着ないのは確かにもったいない。なら、いつか機会があれば着付けを習おう、と思っていたところにちょうど去年、家から近い場所に着付け教室があるということを知り、すぐさま参加手続きをすませ、練習用の着物を買いにリサイクルショップにいったのだが。

 思えば、あれが転落の第一歩であった。うまれてはじめて着物に袖を通し、鏡の前にたつと、なんとそこには驚くような和服美人が。言うまでもなく、わたしである。

 (・・・これはいける。)

 わたしは脳内でにやりと笑い、早速着付け教室に通い始め、あとは、もう「着物に見事にはまってあれもこれもと買い出した」というおなじみのパターンにはまってしまい、現在に至る。その過程でさまざまな人やお店と出会い、きものおたすけくらぶさんもその一つである。 (今の自分のはまりっぷりを見た限りでは、相当長ぁ?いお付き合いになることは間違いないが。)

 そして去年、仕事でアメリカに行った際、着物も持参した。そして、あるイベント会場で着物を着たら皆様寄ってくるわ寄ってくるわ。「みやげ物店での安い着物もどきは見たことあるけど、ちゃんとした着方をしてる人を見たのは初めて!」だの「素敵!」だの「いいなぁ、やっぱり日本文化って感じがする」だの、はては「Oh!ジャパニーズ・ビューティ!」だの。笑いが止まらなかった。「写真、いいですか?」「おお、もっちろん!!!」。着物をビシッと着こなし、なおかつ英語で着物を着る際の決まりごとや、柄や色などを使って季節や行事ごとにあれこれアレンジできるという着物の奥深さについて説明をしている時は、自分はかなり「イケてる国際人なのでは!?」とついつい有頂天になってしまうほどだった。皆さんは、それほどまでに熱心に聞いてくださっていたのだ。着物パワーは、確かに存在する。

 日本人の特権である着物。そして、それを着る事によって、自分の中でうまれる自信。これらを身にまとい、今年もわたしは国際派和服美人っぷりを披露すべく、アメリカへと向かう。

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