第27回 ちえ様

 猫と同居している。

 猫の愛らしくも不可解な行動。新聞を広げるとそこに座る。出かける間際に餌をねだる。については、猫好き以外にもおなじみだろう。が、着物に異常な興味を示す猫(♀)と言ったらどうだろうか?

 出会いは3年前のお正月。近くのコンビ二でいつも物乞いしていたのら猫がひょんなことから家に住みついてしまった。今では完璧な座敷猫。この猫に「着物好き疑惑」がかかっている。

 飼い主が着物を着ようと準備を始めるとソワソワ。着始めると、品定めでもするかのように上目遣いにジー。着物や羽織、長じゅばんが畳んであると、飼い主の目を盗んでは包まって眠る。湿気を逃がし、うまく温度調整をしてくれる絹が好きなだけ…という説もあるが同じ絹でもスカーフには興味を示さない。綸子や大島のような、ちょっとツルっとした感触のものがお気に入りのようだ。
着物の取り扱いも立派なもので、決して爪は立てない。万が一のときは富さんに泣きつこうと決めているので、不安はない。

 ふと思う。前世と言うものがあれば、彼女は「良いべべ」たくさん持ったお姫様だったのかもしれない、と。現在、いくら毛皮を着ているとはいえ、暑かろうが寒かろうが脱ぎ着もできず、柄を替えることすらできないのでは面白くなかろう。その無念を代わって晴らすのが、飼い主としての私の責任。ただの道楽じゃないんだって! 責任なのよ、セキニン(^^)!

晴れやかな気分で着物に袖を通す私にモト姫が冷ややかな視線を飛ばしてくる。また、品定めの刑である。
【了】

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