第26回 かなこ様
七五三のきものは母の仕立てたウールであった。なぜかと聞くと、姉の三歳のお祝いに着たきものは出来合いのものであったが、表地が正絹であったため、「子供は汚すから」という理由ですぐに脱がされたという。そのきものは、姉の三歳の写真でしかみたことがない。
姪がうまれた。大きく育った姪は、今年三歳のお祝いをする予定。姪には、羊の加賀紋をいれた被布を仕立てるつもりでいる。
ある年の夏、仕立てあがったばかりの帯をしめて出かけた。その日、思い切り汚した。次の日、泣きながらお手入れを頼んだのは言うまでもない。しみ抜きでは助からなかったが、なんとか再生してくれた。汚すのはこどもだけではない。着ていれば程度の差はあれ、汚れるのは当然である。今年もあの帯の季節がやってきた。
さあ、今年はどこへ出かけようか。
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