お手入れのいろは
第9回 触らないでほしいの!

 「シミ抜き講習会」などがどんどん盛んになって、シミ抜きを習ったことがある方が増えてきました。きものや帯の汚れたところを自分で綺麗にできたら、こんないいことはありません。「お手入れ代」は、結構かかりますよね。よく着る方、よくこぼす方は経済的な負担も当然大きくなってしまいます。おまけに、新しいきものや帯を購入するなら「ワクワク」「ドキドキ」と胸がときめいて、少女の頃や初恋を思い出したり(?)できますが、お手持ちのきものや帯をお手入れに出すのに、そんな胸のときめきはありませんよね。とほほ

 「ベンジンは、このように使いましょう!これでぼかせば、輪じみもできません。」

  たしか、習った時は先生が、こんなことを言っていたっけ。その場でやった時は、上手くできたんだけどなぁ。こんなこと、経験したことはありませんか?

 最近、こんな質問が激増しています。

 「シミをつけちゃったので、自分で処理をしたんですが、シミは落ちたと思うんですぅ、でも、何だか処理した箇所あたりが白っぽく見えるんですけどぉ」

 結論を先に申しますと、ほとんどのケースが「スレ」の発生で、このような状態になっております。「スレ」は、生地が毛羽立ってしまいますので、斜めから見ると白っぽく見えるのです。

 毛羽立ちを直すには、高度な技術を要し、シミ抜きよりも、手間と費用がかかってしまいます。

 そんなに強くこすった覚えはないんだけどと皆様おっしゃるのですが、「シミをしっかり落としたい。」と思う気持ちが手に伝わり、つい、手に力が入っているようです。絹は、店主と同じようにデリケートで傷つきやすいのです。なので、本音を言えば、皆様がシミ抜きに興味をお持ちになり勉強してくださるのは、嬉しいのですが、「いじらないで」「触らないで」と囁きたくなるものが結構あります。

 宴会、パーティーシーズンにお見かけいたしますが、ボーイさんにおしぼりを頼んで、こぼしたところをゴシゴシ拭いている方。最悪なのは、おしぼりがアッチッチだったときです。熱を加えることで、シミは生地の奥へとくいこんでいき、一体化して落ちにくくなっていくのです。

 生理のシミ、尿のシミ、母乳のシミなどは、恥ずかしさで、ご自身でお洗いになられてから、お手入れにお出しいただいていることがございますが、恥ずかしがらずに、私たちお手入れのプロにお出し下さい。

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