お手入れのいろは
第8回 どっちのシワが問題か?!

 猛暑の間、怖い話が続いた連載ですが、この原稿を書いている今は、処暑をすぎてそろそろ朝晩、少しだけ秋の気配を感じ始めて、ホッとしているところです。皆様もそろそろ夏にお召しになられたきものや浴衣、単衣を片付けながら、袷のきものをタンスから引っ張りだしているころでしょうか?

 実は、知人のお嬢さんから、こんな恐ろしい話を聞いたことがあります。「おばあちゃんからもらったきものに母からもたった帯を締めて出掛けたとき、駅のホームで電車を待っていると突然知らないおばさんが、ダッダッダッ!と突進してきて、「帯締の房のはさみ方が逆。おはしょりがシワシワ。丈が短すぎる。衿をこんなに出しちゃって遊女じゃあるまいし。」と言いながら、あちこち引っ張ったり、つねったりしながら、直してくれました。なんとなく怒っているようでもあり、忙しく動く手は千手観音のようで、その形相は、阿修羅のよう。恐ろしくて、口をきくこともできませんでした。(涙)」と。

 さて、シワは、どこまで許されるのでしょうか?

 立体的な人間の身体を包むことでできる自然のシワや、美しい所作によってできるシワは、逆に美しいと思います。ピシィッとシワ一つないきもの姿は不自然すぎて、近寄りがたい感じがしませんか?人間だって、美しいシワとそうでないシワがありますよね。満面の笑み、爆笑した時、孫の可愛い姿に目を細める祖父母のシワは、美しいですが、不平不満や怒りの表情でできるシワは、美しくありません。

 たとう紙の中で、少しズレてしまったり、タンスの中にギュウギュウと押し込みすぎてできてしまったシワができてしまったら、デパートの包装紙のようなペラペラした紙をきものの上に置き、濡れタオルで2、3回こすった後、アイロンをしてみてください。実は、この方法を使うと、スチームアイロンをダイレクトにかけるよりも熱が伝わりやすく、シワが取れやすいのです。縮緬やお召しなど、注意をしなければならないものは、ありますが、どうしてもという時は、やってみてください。ちょっとでも不安があったら、やらずに、私たちにお声がけください。

 恐怖のお直しおばさんに負けじと、きものを着て出かけて、楽しい思い出をたくさん作ってください。

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