お手入れのいろは
第5回 恐怖体験。洗い張り。

 このお話は、本当に起こった恐怖体験です。

 少しきものに興味を持ち始めたある女性。友人の結婚パーティーで訪問着を着用し、友達やご親戚の方からもお褒めの言葉をいただき、大変気持ちよかったそうです。しかし、この後、恐怖体験をします。

 結婚式で着用したきものをそのままタンスにしまってよいのか?それともクリーニングに出すべきなのか?全くわからないので、迷った挙句、呉服店に持ち込み

「昨日、結婚式で着てぇ...洗った方がいいんですかねぇ?」

などとしどろもどろしてたところ、

「洗い張りですか?」

と呉服屋の担当者さん。どこかで聞いたことがある単語ということで

「はいそうです!」

と元気よく答えてしまったそうです。

 後日きものを取りにいくと、お手入れに出したきものはキレイな反物になっていました。かなり、気持ち悪くなりながらも、勇気をだして

「あのぉ これってぇ きものの形のまま返して欲しかったんですけどぉ」

というと、

「かしこまりました。お仕立てですね。」

と呉服店担当者さんは伝票を書き始めたそうです。

 きものというのは、たった一回着ただけで、恐ろしい手間と気絶寸前の高額なお手入れ料がかかるのだと愕然としてきものを着るのはもうやめようかと考えたとのことです。

 その後、根っからの勉強家である彼女は、洗い張りの意味を始め、間違いを学び、今は、すっかりきものを楽しむ方となっておりますが、あの時の呉服屋さん、もう少し話を聞いていてアドバイスしてくれたらなぁ、例えば、「何回くらいきたの?」とか聞いて欲しかったと思うそうです。

 提供させていただく側が、コミュニケーションをしっかり取れないことで、こんな経験をさせてしまい、きものを嫌いになってしまう人がいるのだろうと思うと、背筋が凍ります。

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